初まりの初まり

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「俺の名は一応狐崎紅蘭。哀、気に入った、俺のことは紅蘭と呼べ」 「こう、らん…?」 「嗚呼、哀。俺らは今日から一心同体、運命共同体だ」 「一心同体、うんめい、きょーどーたい…、?」 哀は紅蘭が言った言葉をただ繰り返し言っていた。哀は殺意や憎悪などの感情しか向けられていなかった。希望、期待、そんな前向きな感情を向けられたことはなかった。哀は戸惑った。向けられたことなに希望や期待にちゃんと答えられるか、絶望され、その辺ですてられないか。そんな事を思っている哀を見て狐はふと思いついた。 「哀、大丈夫。俺はずっとお前のそばにいる」 紅蘭は近くのベンチに哀を座らせると前にしゃがみ、静かに何かを唱えた。すると紅蘭の姿が普通の服から赤と白の着物、尻尾は一本から九本になった。哀が驚いていると紅蘭は哀の足首を持ち上げ爪先に軽く口付けをした。 「狐族最高長、九尾こと狐崎紅蘭。此処に秋月哀に忠誠を誓う。主死す時我も死す。主と我一心同体、運命共同体。」 紅蘭がブツブツ言っているのを見ていた哀だったが、理解できない様子で固まって居た。なぜかベンチに座らされ、足を持たれ、何故か爪先に軽く口付けされている。狐だったはずの紅蘭は何故か尻尾が増え、ゆらゆらさせている。これこそ解せぬ。 「哀、何処かいい?契約の印の場所」 「え、えっ…ど、どこでも…」 「なら手かせ」 紅蘭は哀の手を取り手の甲に軽く口付けをした。すると手の甲が焼けるように熱く、痛くなった。哀は少し顔を歪め手首を持ち痛みに耐えた。痛みがおさまると哀の手の甲には赤い模様がついていた。それは焼けていて取れそうにもなくなんなんだ、と哀は首を傾げた。 「これは契約の証。これが消えない限り俺はお前のそばを離れねぇよ」 戸惑う哀を見て紅蘭はやれやれと首を振った。そして下から哀を抱え上げあった時の狐の姿に戻った。哀はとりあえず落ちないように紅蘭の服をつかんだ。紅蘭は涼しい笑みを零し哀のお腹に顔を押し付けた。 「つまり、ずっと一緒ってことだ、ばーか」 「…馬鹿じゃ、ない……」 哀は少し嬉しいと感じたが哀自身はその感情が嬉しい、と言うことを知らなかった。
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