初まり

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初まり

「紅蘭、は、恥ずかしいんだけど…」 「いいじゃねぇか、お前はまだ子供なんだから」 紅蘭は哀に感情を教えるべく色んな場所に行った。東京のスカイツリー、海外の観光名所。夜空の綺麗な場所に高い場所、様々な場所に連れて行き、少しは感情豊かになった…気がすると紅蘭は思い、もう普通の商店街をあるいいていた。だが普通に歩くのではなく、紅蘭が哀を持ち上げている形だった。もちろん昼間で人目もたくさんあった。哀は羞恥心から恥ずかしいと言ったが紅蘭は嬉しかった。最初感情のほとんどない哀だったけど今はある、と思えて。 「紅蘭、あれ、何…?」 「あれは野良猫だな」 「…?人の形してない…」 哀は紅蘭と一緒だから動物は全て人の形をしていると思っていた。今度動物園にでも連れて行くか、そう思いながら紅蘭は説明していった。哀はあの日から紅蘭に心を開いたが決して自分から近寄ったり、何かをねだったり、わがままを言ったことはなかった。 「……」 紅蘭が哀を下ろすと哀は野良猫を追った。初めて見る四足歩行の動物が珍しいらしく、どんどん路地裏へ行って猫は止まらなかった。紅蘭は何かおかしいと思った。猫なら少し高い場所に登って逃げて行くだろう。だが、哀のおっている猫はまるで誘い出すかのように走っては後ろを見、また走る。 「哀、そいつはただの猫じゃねぇみてぇだ」 「……?」 哀を抱き上げ、猫を見ると猫は黄色の鋭い目をこちらに向けていた。きっちりと綺麗に座るとやがて霧に覆われた。みるみるうちに人間の形になって行った。 「お前、俺が普通じゃないってわかるなら、お前も普通じゃねぇよな?」 「へぇ?この俺にそんな口きくのか」 「はぁ?何様だよ」
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