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思いがけない父親の発言に、少女は硬直。
適うはずないと分かりながらも、必死で父親に対抗しようとする少年。
渚は、訳が分からず立ち尽くす。
『なぎさっ、そのオッサンを止めろ!
引っ越しなんて嘘!!
こいつらグルんなって、
ミチルをどっか遠くに連れてこうとしてる!!!』
少女は状況が飲み込めないまま高級車の後部座席に押し込まれる。
『ミチルッッ…――!』
『ちょい待ち』
渚は車を追いかけようとしたところで、母親に抱き上げられた。
『何すんだよ!』
『他人様のことに口出すなって言ってるの!
あの家のオヤが、
こっちの目が腐るくらい親バカなの、
知ってるでしょう。
何か事情があることくらい理解せぇ、バカ息子!』
この時渚の頭を掠めたのは、前日に目にした涙の光だった。
何が彼らをそうさせたのか。
どうして彼女が選ばれた?
運命は残酷に彼らを引き裂き、そして、少年らは、
涙も出ないほどに『運命』に対して無力だった。
『イツル、ナギサ……俺ヲ恨メ。俺ヲ、俺タチヲ……』
少年の父親は言った。
静かに、
枯れた目をして、
心を奪われた人形の様に。
運命は、理不尽に、残酷に、確実に輪廻している。
小学二年生―――彼らにとって、消えない傷痕。
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