第2章

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一流は馴れた手つきで寄ってくる女子達を避け、渚の前に立つ。 「お前のハトコ、  この間の実力試験満点採ってたじゃん!  掲示板見た?」 「あぁ。そーいや言ってたな、そんなこと。  鼻高々ふにぃっ…!!」  バコーンッ! 丸めた教科書が渚の後頭部を襲う。 感心するほどいい音がした。 「悪かったわね、鼻高々で。  後ろに座ってるの、忘れてました?」 鼻を鳴らして憤慨しているのは渚の母親の従姉妹の娘、所謂”はとこ”というものになる、唯間槙(ただまこずえ)だ。 槙は渚と同じ進学コース一年三組。 小学校、中学校でも最高成績を残し、中学では女子校の生徒会長として多くの業績を築いた。 勿論この学校においても、彼女の名を知らない者はいないに等しい。 「何で俺の周りにはこう、  すげぇ奴が多いんだろ……」 呟く渚を無視し、槙と一流が話に華を咲かせていた。 「先週渚の引越しの手伝いしたんだけどさぁ、  こいつ わざわざ〈マイマグカップ〉なんか  持ってこようとすんの。  それくらいこっちで買えって思うよなー。  荷物になるし割れるかもだし。  しかもさぁ、荷物の中に熊のぬ…――」 「ぅおいっ!待て、それは待て!!」 ろくでもない話をしていることに気付き、止めに入る。 が、時すでに遅し。 「ちょっと黙りなさいよ渚。  高橋くんの話、途中なんだから」 「そぉーじゃないだろ!!」 「ん…?」 ある席が一流の目に留まる。
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