第2章

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槙の左横の席。 窓際で後ろから三番目の、前から見れば比較的目立たない場所だ。 「その席、空き?」 一流が訊ねると、渚が「ああ」と曖昧な相槌をうった。 「入学式から、ずっと空席。  噂じゃいきなり停学らしいぜ」 「まじで?」 「まあ、いろいろあるのよ」 一流と渚の会話に、意味深な発言をする槙。 どうやら彼女は事情を知っているらしかった。 「友達なの」 槙のたれ目が若干下がり、性格からは予想出来ないおっとりとした笑顔が浮かぶ。 一流は少しドキッとした。 「あ、メグムの話っ!?」 渚の前から女子が話に割り込んでくる。 「メグムはねー、担任とケンカしたんだよ。  あと、仕事が忙しい。ね、コーちゃん」 “コーちゃん”、というのは槙の小学校時代からの愛称。 彼女を知る人間は、大抵そう呼んでいる。 「仕事?」 「そうそう。だから停学な訳じゃなくて  単純に忙しいのよ」 槙が淡々と答える。
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