14人が本棚に入れています
本棚に追加
槙の左横の席。
窓際で後ろから三番目の、前から見れば比較的目立たない場所だ。
「その席、空き?」
一流が訊ねると、渚が「ああ」と曖昧な相槌をうった。
「入学式から、ずっと空席。
噂じゃいきなり停学らしいぜ」
「まじで?」
「まあ、いろいろあるのよ」
一流と渚の会話に、意味深な発言をする槙。
どうやら彼女は事情を知っているらしかった。
「友達なの」
槙のたれ目が若干下がり、性格からは予想出来ないおっとりとした笑顔が浮かぶ。
一流は少しドキッとした。
「あ、メグムの話っ!?」
渚の前から女子が話に割り込んでくる。
「メグムはねー、担任とケンカしたんだよ。
あと、仕事が忙しい。ね、コーちゃん」
“コーちゃん”、というのは槙の小学校時代からの愛称。
彼女を知る人間は、大抵そう呼んでいる。
「仕事?」
「そうそう。だから停学な訳じゃなくて
単純に忙しいのよ」
槙が淡々と答える。
最初のコメントを投稿しよう!