第2章

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彼女の仕事というのは、やはりそれなりに忙しいのだろう。 そして、彼女はプロ意識が高いらしい。 同級生にすら個人プロフィールを明かしていないのだ。 メグムを中学から知っている人間も、彼女の名字を訊ねるとほとんどが肩をすくめ、知っているらしい学校側の者達も固く口止めされている。 担任の持つ名簿には、名前すら載っていない。 ズーッと音を立てて紙パックのジュースを飲み干すと、それを投げてごみ箱へ入れる。 メグムは上手いと褒め、槙は行儀が悪いと叱った。 「モデル、やめる気とかはないんだ?」 「今のところはね」 「でも、現実的に考えて  いつまでも続けられる仕事じゃないだろ?  今でこそ人気で囃し立てられてるけど、  老いればいつか  消えていくしかないのが芸能界じゃん?  って考えたら、まじめに勉強して、  学歴獲得しといた方が  賢明だと俺は思うけど」 「そうだね」  彼女は表情を一遍も狂わすことなく、弁当箱に詰められたサラダを口にした。 でもね。と続ける。 「今の私には、これしかないんだよ。
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