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ミキさんは槙の母で、街の片隅で定食屋を営んでいる。
小さな店だが、知る人ぞ知る名店。
その自慢話を、渚はよく母親から聞かされたものだった。
「ハイハイ。
でも、こういう大事な物を
私に預けていいわけ?」
槙が挑戦的な目で女を見た。女は一瞬黙ったが、すぐに口の端を吊り上げる。
「…見てみれば?あんたの
特になるようなことは無いと思うよ」
「……」
「どうせ見やしないでしょ。
そんな意味の無いこと聞くなんて、
らしくないんじゃない?」
「仲よくしなきゃだめだよ?
同じクラスなんだから」
メグムの目が細くなる。無邪気で、癒しを与えるような笑顔。
確かな温もりを持ち、光を放つような表情。春だからこそそう見えたのか、散り始めた桜がそれを助けたのか、
“陽だまりみたい”。
そういう印象を受ける。
―――なるほど、通りで騒がれるわけ。モデルって、すげえ―――
渚は思った。
そして、何もない自分の右手を見つめる。
―――きっと、幸せなんだろうな―――
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