第3章

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「佐藤ってバカだったんだぁ~」 「だからバスケ推薦にしとけ  って言ったんだよ。  体育科の欠点なら、  進学科より百点多く落としても平気なのに」 メグムはコップの氷をストローで弄び、渚のテストを面白そうに眺めている。 カラン、カランと涼しい音を立てた。 やがて、注文していた品が次々運ばれてくる。 急いでテストを片付けていると、店員の一人が口を開いた。 「あんたが教えてあげれば?  トモダチ、なんでしょ」 誰に、というのは分からない。 料理をこぼさないよう手元に気を配りながら、そう呟く。 「あっ!はーちゃんだっ。  今日は真面目にバイト出てるんだね」 「関係ないでしょ。  つべこべ言ってないで働いたら?」 メグムは明るく、槙は冷たく答えた。 そして「女子だなぁ」と興味津々で三人の会話を眺める一流。 料理の熱気が立ち上ぼり、顔面を温い空気が覆う。 空気が、一品一品の匂いそれぞれが、嗅覚を刺激する。 味は所謂おふくろの味。 お腹の底に染みるような暖かい家庭の、それでいてどこか特別さを孕んだ味がした。
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