第3章

12/23
前へ
/164ページ
次へ
箱から出てきたトランプは随分古く、槙が産まれるよりずっと前からあるものであることが見てとれた。 裏面の模様は滲んだり擦れたりしてよく見えないが、日本語でも英語でもない文字の羅列だ。 「トランプなんて何年ぶりだろぉ。  何する!?  ババ抜き?七並べ?ダウト?大富豪?  なんならポーカーでもいいけど!!」 メグムは目を輝かせ、楽しそうに言う。 「俺もう頭使いたくない。ババ抜きにしよ」 勉強机の椅子に座り、少し眠そうな一流。 サッカー部は今日も下校時刻までみっちり練習だったのだ。 体育科にしては頭の冴えた彼だが、流石に部活後に夜遅くまで考え事をするのはかなりの負担らしい。 誰にも異論はなく、あっさり種目が決定する。 始めに「トランプにしよう」と言いだしたのは渚。 早く終わらせてさっさと帰りたいバイト、トランプは昔からよく暇つぶしに使う一流も承諾。 メグムは、自分は何でもいいからと初めから選択権を投げていた。 お茶を運んできた槙の母親も交ぜてほしいと言ったが、槙が反対しそれは叶わなかった。 「いいんじゃね?  人数多いほうが面白いだろ」 「だめよ。  お母さんトランプゲーム得意だから  一人勝ちしちゃうもん」
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加