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“キス”と言っても、別に少女達がませているわけではない。
外国系の血が強く、祖父母に会うため度々ヨーロッパを訪れるこの家庭の中では、あくまでこれが“普通”。
『お前の母ちゃんまじ強え…』
『いい加減アホなこと言うのやめろよ。
俺でも母さんや父さんに逆らおうとは思わないっていうのに』
すげえ怖いもん、と付け加え、少年はソファーに腰を下ろした。
負けず嫌いな彼だが、両親にだけは頭があがらない。
力でも言葉でも、幼い彼らでは気の強い親には適わないのだ。
ピュウっ、とひとつ強い風が窓を叩く。
『風強うなってきたねえ。祭、なくなんないかな』
挨拶もなしに無断で入って来たのは、渚の母親。
彼女はリビングを覗くと、『浴衣着る前にちゃんとトイレ済ましときよぉ』と言いながら自分が真っ先にトイレに向かった。
お前が入ったらオレらが使えねぇじゃん!と渚がその背中を追いかける。
――なっくんと遊べるん、今日が最後――
和室から聞こえてきた声に、渚は思わず足を止める。
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