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少年は文句を洩らすが、いつもとはどこか違う幼なじみの様子を見て、いち早く“ただ事ではない”予感を察知する。
浴衣を息子に着付けながら渚の母親は、少女が、少年たちに悟られないよう気遣い笑顔で戻ってくることを祈る。
きっと彼女なら大丈夫だ、と言い聞かせながら。
『見て見てっ!ちょうちょの浴衣ぁ。似合ってる?
似合ってないとか言ったらぶっ飛ばす☆』
母親の心配も取り越し苦労で、少女は満面の笑みでリビングへ入って来た。
『うんうん、似合ってる!なあ、渚?』
その言葉は決してお世辞でなく、少年が少女の手を取り渚の前に並んでみせると、まるで絵に描いたようなカップル……
二人がもう少し歳を取り、血の繋がりがなければの話だが。
渚が頬を緩めて『似合う』と言うと少女は瞳を輝かせ、空いたほうの手で渚の手を握った。
その顔を見れば、自然と不平不満は拭い去られる。
細かいことを気にしても仕方ない。彼女も笑っている。
さっきのは何かの勘違いだったのだと、数分前の衝撃を記憶の隅に追いやる。
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