第1章

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日が暮れ始めると、『気を付けて行ってきなさいよ』という母たちの言葉を 聞いているのかいないのか分からないほど、盛り上がったテンションで三人は家を飛び出して行った。 『ミチ、何食う?』 『りんごあめ! いっくん、あそこ射的やってる! ぬいぐるみとって!』 『おっけ、じゃありんごあめ買ったら射的な! 渚、おれ、焼きそば』 『自分で買いに行け! ミチ、かんざしずれてる』 『わっ、ありがと!』 楽しい時間は、あっという間に過ぎるもの。 気付けば辺りは暗く、屋台の提灯が灯を灯す。 カラスの鳴き声を聞きながら、お面やらヨーヨーやらですっかり祭色に染まった三人は機嫌よく歌を歌いながら家路を辿る。  運命とは、理不尽で。 翌日渚が昼寝をしていると、少し瞼を腫らした少女が家を訪れた。 母親に押し出されるようにして外へ出る。
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