第1章

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外は目が焼けるような赤い夕暮れ。 どうやら夕方まで寝ていたようだ。 『今日、引っ越しすんの。イマカラ』 少女はけろっとした顔と声で引っ越しの事実を伝える。 それは昨日、渚が勘違いだろうと記憶を薄れさせていた内容で、しかし、あまりにさばけた少女の様子に、動揺も寂しさも拭い去られた。 『ミチらがいないからって、泣くなよ!』 それは、泣く気も失せるほど清々しい笑顔。 つられるように渚も笑った。 『死ぬわけじゃあるまいし、泣くわけないだろ!』 少女は小声で何か呟いたが、聞こえなかったからと聞き返しても “にっ”と笑うだけで答えない。 『元気でね』 『オマエもな。イツにも言っとけ』 『ミチらが居ないからって泣くなよ』 『それはさっき聞いた』 『………』 少女はいつものように軽く挨拶代わりのキスをすると、向きを変え走りだす。 空の茜色が目に染み、痛くてこすると、人差し指が少し濡れた。 そんなセンチメンタルな空気を壊したのは、未だ唯一ひとり、納得出来ていないらしい少年。 『はーなぁせッッ!放せクソジジイ!!!』
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