言い表せない瞬間

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――ピピピピッピピピピッ 目覚ましの音が鳴る。 それを手探りで探し当て、止めた。 ねむい。 いつもならここで、布団の中少し体を動かしたりして。 思い切り伸びをして。 漸く、起き上るのだけれど。 ねむい。 ……、 再び睡魔に襲われて。 二度寝に入る寸前、 「とも、」 頬が暖かくなって、ゆっくり撫でられた。 それに少し息を吐いて。 落ちかけた所で、 「とも」 瞼をそっと撫でる指。 「ん、」 「起きる時間だぞ」 「ん、」 ゆっくり瞼を開ければ。 こちらを向いて少し体を起した蒼が、腕に頭を乗せて私を覗き込んでいた。 「ねむいの」 「……昨日は抱いてねぇぞ」 「ん、」 「おい、」 「ねむい」 「……大丈夫か?」 頭を撫でる手が心地よくて。 でも何とか目を開いた所で、蒼のキスが降ってきた。 「今日朝霧と飯食ってくるんじゃなかったか?」 「うん。蒼は夕飯どうする?」 「あぁ、今日は残業遅くなりそうだから、同僚と食ってくる」 「はーい」 いつも通り準備して、蒼を送り出す。 「いってらっしゃい」 「あぁ。体調悪かったら早めに帰れよ?」 「うん、」 「そして俺に連絡」 「はーい」
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