歌手と執事

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年末も30日。 既に2度目の受診を終えて母子手帳も貰ってきた私は。 この日の朝から、遠くにいる2人にメールを送っていた。 『時間があったら電話できる?』 本当は顔を見て話をしたいけれど。 彼らだって忙しい。 とりあえず連絡を待っていれば、すぐに電話が来たのは、 「もしもし、優斗?」 『あぁ、お嬢様。たった今メールを見まして、すぐご連絡いたしました』 私の声に、蒼がマグカップを両手にソファに歩いてきた。 優斗がいる所とは、7時間の時差がある。 きっと、仕事を終えたところだったんだろう。 「お仕事、お疲れ様」 『あぁ、今日も一日終わったよ』 優しく響く口調は“執事”から優斗に戻って。 『それで、どうした?』 少し笑うような息遣いとともに聞こえてきた。 「あのね、実はちょっと話したいことあって」 『話したい事?』 たったその一言で少し不安そうに響く声に。 今度は私が笑う。 隣に座る蒼がゆるゆると頭を撫でて。 促されるように、一度目を伏せてから声を出した。 「一番最初に、話すからね」 『……とも、もったいぶらないでくれ』 「あのね、優斗」 『うん?』 「私、赤ちゃん、できたの」
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