可愛く笑って胸を鳴らす

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「なぁ、とも」 ベッドのヘッドボードに寄り掛かり、雑誌に落としていた視線を隣に滑らせた。 「んー?なぁー……に?」 隣、ベッドの上でストレッチをしているともは、うつ伏せからの上体反らしをしながら。 顔を僅かにこっちに向けた。 その白い喉元に噛みついてやろうかなんて、思いながら。 噛みつかないまでも後でしっかり“痕”でも残そうと考え、ソコだと明日の着る服に支障が出るかと思いとどまった。 「ふふっ、蒼?」 「ん、あぁ」 反らした体をまたうつ伏せにして。 こっちに向けた顔は穏やかに微笑む。 「何を“そんなに”考え事、してたの?」 「……“そんなに”?」 そんなにと言われるほどの時間を考えていたかと思えば。 「ふふっ、私だけが知るクセ、出てたよ?」 にっこり笑った顔に、さて今俺は何をしながら考え事をしていたか…… 「それで、なぁに?」 「うん?」 「何の話、だったの?」 あぁ、すっかり思考がずれていた。 「今度の連休、どこか出かけるか?」 「……あ、そっか連休あるんだ」 のそのそと這いつくばって俺の横にくっつき、同じようにして雑誌を覗き込んだともは。 各地の行楽ガイドが乗るそのページ、それも端の方にある…… 「あっ!かぼちゃのケーキだって!」 可愛くその目を輝かせた。
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