可愛く笑って胸を鳴らす

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「あぁ?……くくっ、お出かけより食い気かよ」 「ケンちゃんとこでもう出てるかな」 「かぼちゃのケーキか?」 「うん、かぼちゃのケーキ」 覗き込むようにしたその頭をぽんぽんと撫でれば向いた視線に。 「明日買いに行くか?」 聞けば、ともはうーんと珍しく考え中だ。 「珍しいな」 「ん?」 「いつもなら速攻“うん”って返事だろ」 「……そんなこと、ないよ」 「くくっ、そうだったか?」 「そうでしたっ」 少し膨れた両頬を片手で挟めば、可愛い口先から空気が抜けた。 「お出かけしてー……」 「ん?連休か?」 「連休。お出かけして、」 「あぁ」 「秋を満喫してー、あ、紅葉、まだだよね」 「紅葉は……まだ少し早いな」 「んー、」 「このあたりとかどうだ?」 「あ、可愛いお店もあるの?」 「どうしたい?」 「行きたいっ」 「じゃあ、決まりだな」 「蒼、ここで良かったの?」 「くくっ、俺が行きてぇからともを誘導した」 「ふふっ、じゃ、けってい!」 拳を突き上げてまで喜ぶともに。 本当ならお前が行きたい所ならどこでもいいなんてことは、敢えて言わない。 「最後はケンちゃんとこ、寄ろうね!」 「くくっ、すぐそこだろ。食いたければ明日買ってこい」 「いいの!秋満喫ツアーなの!」 浮かれた彼女に笑みが洩れる。 【秋桜につられる藍の花】
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