一歩二歩も先を歩く

2/6
488人が本棚に入れています
本棚に追加
/284ページ
「お疲れ様っす」 会社のビルを出て、バス停とは反対へ歩き出す。 「西嶋ー」 後ろから呼びとめられて、振り返った。 「……あぁ、どうした?」 「いや、お前いつもバスなのに今日は反対行くなって思ってさ」 「ん?あぁ、ちょっと寄る所あってな」 歩き出しながらそう言えば、ふぅんと返事が返って来た。 「……なぜ一緒に歩く?」 「あー、俺んちこっちなんだよ。途中まで一緒に帰ろうぜー」 何が楽しいのかうきうきとした口調で言ったコイツは同期。 会社に入って既に4年は過ぎているのに、まだなんとなく学生っぽいノリが抜けない奴。 「……で、どこまで一緒に歩くつもりだ?」 「なんだよー。俺んちもこっちなのー!ったく冷たいヤツ」 ぶつくさと隣でふくれられてもな…… 俺は会社では無駄な事はしゃべらないし、無駄な関係も築かない。 親しくするのは煩い仲間で十分だと思いながら、一緒に歩くのすらめんどくせぇとため息が漏れた。
/284ページ

最初のコメントを投稿しよう!