一歩二歩も先を歩く

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普段から、他に客がいる時には“コイツ”と俺はただの店員と客で接する様にしている。 2人の会話は二人きりでしたいし、コイツも仕事中という立場だからというのもある。 入ってきた俺のアイコンタクトに少し驚きながら。 僅かに微笑んで、座った俺らに水を出した。 「今日のおすすめコーヒーにしようかなー」 「俺はいつもの」 「はい、かしこまりました」 俺たちの注文を受けて準備を始めたコイツを見ながら。 「おねーさん、美人ですねー」 っ!! こめかみが引くつくのが自分でもわかった。 「お前、ナンパすんじゃねぇ」 「えー?ナンパって程じゃないだろー?ねー?おねーさん!」 少し微笑むだけで返事をしない。 そんな彼女にしつこく話しかけるコイツは……、 「おねーさん、彼氏、いるの?」 「……かれ……し?」 ほんの一瞬俺を見て。 「ふふっ、私、結婚してますよ」 左手のリングを少し見せた。 「えー!そっかー、残念!」 「おい、残念って結局ナンパだろ」 「んー、まぁ、仲良くなれたらなーとか思ったり?」 「却下」 「なんで。っていうか、おねーさんみたいな美人さんの旦那さんだったら、相当かっこいいんでしょうねー?」
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