伝説グッバイ

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連休の中日はモールへ向かった。 ここに最初に来たのは、高校生の時。 運動会の鉢巻きをつくるのに、生地を買いに来たんだっけ。 キイちゃんがマンション下まで迎えに来てくれて。 バスに乗ったんだった。 着いた先、待ち合わせ場所にいた蓮が女の子に囲まれてて。 「ここ、久しぶりに来たね」 「あぁ、そうだな。最近は向こうのでかい方行ってたしな」 入り口、噴水が見えて。 エスカレーターで上がったところでタケとケンと同流したのよね。 いろんな思い出を思い出しながら。 ふとある場所で立ち止まった。 「どうした?」 「ふふっ、」 私が立ち止ったのは、駐車場に続く入口。 「ね、覚えてる?」 「うん?」 「蒼がその辺で私の目のゴミ入ったの、見てくれたのよ」 「……あぁ、そうか。そうだったな」 少し懐かしそうに目を細めた蒼は。 不意にいたずらに目を光らせた。 「あの時、ついでにキスしちまえばよかったな」 「え、」 「あの時のお前はかなり可愛かったしな」 くつくつと肩を揺らす蒼に、私も苦笑を洩らして。 「そんな事されてたら、きっと今の私たちじゃなかったよ」 「くくっ、だな」 手を少し揺らしながら歩いて。 「あ、でも、蒼と手をつないだ!」 「くくっ、そうだったな」
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