491人が本棚に入れています
本棚に追加
もう既に何度も来た事のあるこのモールも。
来るたびに違うお店が入ってて。
メンズのショップに入っては蒼の服を見たり。
通りすがり、可愛い下着を着たマネキンを見た蒼が、アレにしたらどうだ、なんて笑ったり。
いつも行く私の好きなショップに立ち寄って、選んだ服を買ってもらったり。
そうして歩くうち、私が手洗いから戻ってくると。
……あれ?
蒼、誰かと話してる……?
近づくにつれ、相手の人が女性だという事に気が付き。
なんとなく、ツキン、心臓が痛い。
やだな、もう。
私は彼の奥さんじゃない。
既に結婚もしてるのに、こうやって……
「とも、」
思わず立ち止りそうな時。
呼ばれた声に顔を上げれば。
蒼は私を見て、僅か目を見開いてから。
嬉しそうに笑みを漏らして手を伸ばす。
その手に引き寄せられるように向かってその手が繋がれば。
きゅっと力が込められて蒼を見上げた。
「俺の嫁だ。とも、この人は会社の同僚で桐谷さん」
改めて蒼と話をしていた人を見れば。
その人は目を大きくしたまま、固まっていて。
「……あの、主人がいつもお世話になってます」
ぺこりとお辞儀した所で、その人は、
「あ、えっと、いえ、いえいえ!あの、全然!かえって私の方がお世話になってますから!」
両手をぶんぶんと目の前で振った。
最初のコメントを投稿しよう!