伝説グッバイ

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もう既に何度も来た事のあるこのモールも。 来るたびに違うお店が入ってて。 メンズのショップに入っては蒼の服を見たり。 通りすがり、可愛い下着を着たマネキンを見た蒼が、アレにしたらどうだ、なんて笑ったり。 いつも行く私の好きなショップに立ち寄って、選んだ服を買ってもらったり。 そうして歩くうち、私が手洗いから戻ってくると。 ……あれ? 蒼、誰かと話してる……? 近づくにつれ、相手の人が女性だという事に気が付き。 なんとなく、ツキン、心臓が痛い。 やだな、もう。 私は彼の奥さんじゃない。 既に結婚もしてるのに、こうやって…… 「とも、」 思わず立ち止りそうな時。 呼ばれた声に顔を上げれば。 蒼は私を見て、僅か目を見開いてから。 嬉しそうに笑みを漏らして手を伸ばす。 その手に引き寄せられるように向かってその手が繋がれば。 きゅっと力が込められて蒼を見上げた。 「俺の嫁だ。とも、この人は会社の同僚で桐谷さん」 改めて蒼と話をしていた人を見れば。 その人は目を大きくしたまま、固まっていて。 「……あの、主人がいつもお世話になってます」 ぺこりとお辞儀した所で、その人は、 「あ、えっと、いえ、いえいえ!あの、全然!かえって私の方がお世話になってますから!」 両手をぶんぶんと目の前で振った。
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