イロトリドリ、君思ふ

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「ただいまー」 玄関で靴を脱ぎ、端に寄せる。 まだ帰ってない人の帰りを思い描きながらリビングに向かい。 手に持ったモノを何とかしようと戸棚をあける。 ちょうど鳴ったドアベルの後、リビングに入ってきた足音に。 「おかえりなさい、」 「ただいま」 戸棚からやっと顔を出して。 私はいそいそとキッチンへ向かう。 ネクタイを緩めながら歩いてきた彼は。 キッチンカウンターに頬杖をつき。 じっと私の手元を覗き込んだ。 「えっと、水の中で少し切って……」 細長いガラスのそれに5センチ程度水を注ぐ。 包まれたビニールを取り除いて。 現れたピンクのそれをストンと指し落とす。 「ふふっ、可愛い」 笑みが洩れるのは仕方がない。 見るのはとても好きだけれど、積極的に自分からは買わないソレをちょんと揺らした。
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