ムーンライトセレナーデ

3/4
487人が本棚に入れています
本棚に追加
/284ページ
驚く私にくつくつと笑って。 『とも、ちょっと降りてこないか?』 その言葉に二つ返事で部屋を出た。 5階の部屋からエレベーターを使って。 待ってる時間もなんだか惜しくて、早く、願う。 エントランスを出たところに立っていた愛しい姿に笑みが洩れて。 「蒼!」 「くくっ、尻尾振ったわんこみてぇだな」 肩を揺らす彼は私の頭をポンポンと撫でた。 「もう、あそこにいたの、全然気付かなかった」 「だろうな。空ばっかり見て夫にきづかねぇとは」 「むむ……ごめんね?」 「くくくっ、いや、いい」 蒼に手をひかれて、ベランダ側、道路を挟んだ向こうにある公園に足を踏み入れた。 ベンチに2人腰掛けて。 見上げた先の月はまた一段と高くなった気がする。 「ほら、」 膝に乗ったモノに視線を落とせば。 「……月見団子だ」 「もう食ったか?」 「ううん、食べてなかった」 「ともにしては珍しいな」 「もう!……でも嬉しい!」 「そりゃよかった」 「コンビニ?」 「あぁ。ともには団子、俺にはコレ」 私が小さいパックを開ける横、彼は缶ビールのプルタブを引く。 一気に飲み干された缶は再びビニール袋に収まって。 2人、煌く月を見上げた。
/284ページ

最初のコメントを投稿しよう!