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驚く私にくつくつと笑って。
『とも、ちょっと降りてこないか?』
その言葉に二つ返事で部屋を出た。
5階の部屋からエレベーターを使って。
待ってる時間もなんだか惜しくて、早く、願う。
エントランスを出たところに立っていた愛しい姿に笑みが洩れて。
「蒼!」
「くくっ、尻尾振ったわんこみてぇだな」
肩を揺らす彼は私の頭をポンポンと撫でた。
「もう、あそこにいたの、全然気付かなかった」
「だろうな。空ばっかり見て夫にきづかねぇとは」
「むむ……ごめんね?」
「くくくっ、いや、いい」
蒼に手をひかれて、ベランダ側、道路を挟んだ向こうにある公園に足を踏み入れた。
ベンチに2人腰掛けて。
見上げた先の月はまた一段と高くなった気がする。
「ほら、」
膝に乗ったモノに視線を落とせば。
「……月見団子だ」
「もう食ったか?」
「ううん、食べてなかった」
「ともにしては珍しいな」
「もう!……でも嬉しい!」
「そりゃよかった」
「コンビニ?」
「あぁ。ともには団子、俺にはコレ」
私が小さいパックを開ける横、彼は缶ビールのプルタブを引く。
一気に飲み干された缶は再びビニール袋に収まって。
2人、煌く月を見上げた。
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