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……あぁ、これは、
卒業式の写真か。
ははっ、とも泣いて顔ぐちゃぐちゃだ。
次の写真を開いて、グッと胸が詰まった。
――ともと蒼。
卒業式の後、涙をぬぐうともの頭を撫でる蒼の写真。
2人の距離は人一人分くらい開いていて。
泣きじゃくるともと、ソレをどうしようもできないでいる蒼の表情。
えーっと、確かこれだったかな……。
もう一つ開いた写真は、珍しく満面の笑みの蒼とこっちも満面の笑みのともが、仲間を見てる写真。
これは……そうだ、いつかの飲み会のヤツだな。
俺の盗み撮りの腕もなかなか。
えーっとこれは……、
あぁ、大学祭のファッションショーか。
この写真が本物になるとは、ね。
写真を見ながら頭の中で組み立てていた言葉たちを全部白紙に戻す。
“俺のお嬢様”にメールでもしようと思っていたんだけれど。
久々にこんな写真なんか見たら、メールだけじゃ済まなくなったから。
さて、ケータイ片手に時計を見上げて。
頭の中の時刻は7時間先。
いち早く休日を迎えているはずの彼女は、俺の電話に驚くだろう。
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