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泉は壁にかかっているメニューの札を見ていた。
「じゃ~、豚玉大盛りとオレンジジュースください。」
「はいよ!豚玉大盛り、オレンジ入ります」
真田は、ニッカと笑うと泉の為に豚玉大盛りのお好み焼きを焼き始めた。
「先輩、知ってます?森野先輩、3年では文系を取るらしいですよ。」
「へぇ~、早耳だな。」
「でしょ~。同じバト部の桐野先輩情報だから間違いないですよ!」
ニコニコしながらピクシーの話を始める泉に真田は少し複雑な気持ちになった。
(ちなみにピクシーこと、森野可憐は彼らと同じ高校に通う女子バトミントン部のカリスマ的な人物の事である。泉は、ピクシーの事を憧れの目で見ており、当初、真田も同じくピクシーに恋心を抱いていた。
海斗とピクシーが付き合っていると勘違いした二人は互いに同志と認め合うのだが、真田の心境はここの所、少し変化しているようである。)
「先輩は、3年でどっちとるんです?先輩も同じ文系ですかぁ?」
「あぁ、俺は・・・」
「もし、文系で森野先輩と一緒になったら、チョー羨ましいんですけど!」
「うん・・や。・・・どうかな・・・」
真田は泉の問いに、うやむやに答えながらヒョイと返しでお好み焼きをひっくり返した。
「あ!!すごいじゃないですか!」
見事にひっくり返ったお好み焼きを覗き込みながら、泉は嬉しそうに手を叩いた。
「まぁな、これが俺の実力!」
真田は、ふんぞり返って威張って見せる。
「でも、それくらいは出来ないと、そこ入れませんよね。」
チューとオレンジを飲みながら泉が言った。
「・・・。ほんっと、もっとおだてりゃいいのに。かわいくねぇ。」
真田は不貞腐れた。だが、
「私も練習したら、出来るようになるかな?」
そんな泉の呟きに、一瞬、一緒にバイトをする姿を想像して真田は顔を赤くした。
お揃いのエプロンに、これまたお揃いの三角巾結びのバンダナ。
想像すると意外とかわいい泉に仕上がった。
“悪くないかも。”
「先輩、そこ、暑そうですね。冬でそんなに真っ赤とか、私はここのバイト無理だわぁ。」
「く~~、落とすのか、上げるのか、お前いったいどっちなんだよ!」
「なんの事ですか?」
「・・・。」
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