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アツアツの豚玉が出来上がった。
「お待ち。」
そうぶっきら棒に言いながら、泉の前にお好み焼きを出す。
「美味しそう!」
「熱いから気を付けろよ。」
泉は、ふうふう吹いて少し冷ますと口に入れた。
「おいしい!」
泉は目を見開いて驚いた顔をしながら言った後、夢中で食べ始めた。
泉の一言を聞くと、真田はにっこり笑って他のオーダーのお好み焼きに取り掛かった。
一心不乱に焼く真田に店長が声をかけた。
「真っち、あそこに座ってる子、真っちの彼女?」
「べ、別にそんなんじゃないですけど。」
少し照れて答える。
「だよねぇ。“彼”の前じゃ、大盛りは無いか。」
そう言いながら、店長はにんまりと笑った。
真田は、あからさまにムッとした顔をした。
「ここはバイトのレベル高くてさ、イケメン揃いなんだけど、真っち目当ての客も結構いるみたいなんだよね。」
意外な事を聞いて、真田は目を丸くした。
「そんな子、本当にいるんですか?」
「あぁ、ニブイ所も真っちの好感度上がるポイントだから気にしないで。」
「はぁ・・・。」
「真っちは、もてる方なんだから、自信持ちなって言いたかっただけ。」
そう言って、店長は真田の肩をポンポンと叩くと、客席からの呼びにハーイと笑顔で向かった。
真田は、チラリと泉の方を見た。泉は、最後の一口を食べ終わる所だった。
「先輩。」
泉はにっこり笑っている。
「ん?」
「豚玉大盛り、お替りください。」
おねだり顔で言われて、真田は思わず噴き出した。
「ちょっと、待ってろ。」
確かに、彼氏の前では大盛りお替りは、ないかも知れない。
だが、これは泉の素なのだと思うと、少し嬉しく思う真田なのだった。
「ご馳走様でした。」
泉は満足げに手を合わせるとお財布を取り出した。
「ここはいいって。俺の奢り。」
そう言って、真田は泉を制した。
「でも、結構食べましたよ?」
「いいんだよ。いつもピクシーのレア情報くれるお礼。」
真田にそう言われて、泉もにっこり笑った。
「それじゃ、お言葉に甘えて。先輩美味しかったです。ご馳走様でした。」
「おぅ、また、学校でな。」
「彼女ちゃん、お気に召したら、また来てね~。」
店長が横からチャチャを入れる。
「はぁ~い。」
泉は笑顔で手を振ってお店を後にした。
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