第1章 桜の頃 海斗編

2/3
前へ
/27ページ
次へ
「やぁ、君、バスケ好き?一緒にやらない?」  海斗は、中学に入ってすぐの頃、知らない男子に話かけられた。 彼は、海斗より少し背が高く、ニッと笑った顔が爽やかで印象的だった。 “誰?” まだ全員を覚えているわけではないが、同じクラスではないように思われる。人違いかと周りを見た。 「君だよ?なぜキョロキョロしてるの?」 彼は、白い歯を見せて笑った。 「僕?」 と聞くと、うんうんと頷いた。 なぜ自分なのか解らない。 “変な奴。関わるのはやめておこう。” 「今、そんなに時間ないんで。他の人誘いなよ。」 そう言って、海斗はその場から去っていく。 だが、彼は他の人が通りかかっても、誘おうとはしなかった。 “なんで僕だけに声をかけているんだろう???” ここら辺の小学生は、そのまま近くにある中学校に入学する。 クラスは顔見知りも多いし、仲のいい子が数人はいるものだ。 彼は隣のクラスだった。 でも、彼は友達がいないのか、しょっちゅう海斗に声をかけてきた。 何度目かの誘いの時、海斗は正直に言った。 「バスケ、したこと無いんだ。」 そう言うと、彼は意外そうな顔をした。 だが、人懐っこく笑うと、教えてあげるよ、とボールを投げてよこした。 帰り道、ハーフコートがある近くの公園でバスケをすることになった。 プレーをしだすと、だんだんと楽しくなってきて夢中になってボールを追いかけた。 「楽しいね。」 息を弾ませ、素直な気持ちで言うと、 「じゃあ、一緒にバスケ部に入ろうよ。」 身を乗り出して彼は誘う。 その必死さが可笑しくて、ついつい笑ってしまった。 「あっははは。なんだか唐突だね。君、名前はなんて言うの?」 そう聞いたら、彼は物凄く嬉しそうな顔をした。 「七条蓮って言うんだ。よろしくね!」 「僕は、雪宮海斗。こちらこそよろしく。」 彼は、何度も海斗の名前を繰り返していた。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加