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「今、思えば、蓮の勧誘も強引だったよなぁ。」
蓮を待ちながら、桜の木の下にあるベンチに腰掛けた。
あれから3年が経ち、この春から晴れて高校生だ。
陽気な春の陽射しは、ほんのり暖かく心を和ませる。
ふぁ~と大きな欠伸が出る。
海斗は、ぼんやりと中学1年の春を思い出していた。
あの時バスケ部に誘ってもらって良かった。
中学のバスケ部は強かったので大きな大会では、全国まで勝ち進むことが出来た。
それは、海斗にとって自信にもなったし、何より成長できたように思う。
それに、何度もパスを出し合ううち、蓮との呼吸が合ってきてそれがとても心地いい。
今度は、この高校でもそうであるといいなぁ。
顔を上げると、桜がハラハラと風に触れられ舞い落ちてきた。
薄桃色の花びらは音もない空間に漂い、時を止めたようだ。
静寂がまどろみに誘う。
海斗は目を閉じた。
ー・・・・-
・・・イト・・カ・ト・・・・
どのくらい時間が過ぎたのだろう。
「・・・いと。・・かいと・・・」
身体が揺すられた。
う・・ん。まだ、もう少し、このままで・・・。
「海斗。こんな処で寝てたら、風邪ひくぞ?」
耳元で蓮の声がする。
「ったく・・・・。」
蓮が小声でボソボソ言っている。
何かが顔に触れたような気がして、海斗はうっすらと目を開けた。
「・・・れん?」
目の前には、いつもと違う顔をして海斗の顔を覗きこんでいる蓮の顔があった。
あぁ、まだ春の夢の中にいるのかな・・・
あまりの至近距離に、蓮はすっと海斗から身を離した。
「・・・」
海斗は、彼の喉仏が動くのが見えた。
逆光のせいか、瞳だけが潤んでいて印象的で引き込まれそうだ。
海斗はぼんやりと、蓮を見つめていた。
桜が蓮の上に舞い、彼自身も桜の使者のようだ。
海斗は、手を伸ばした。
そっと、桜の化身に触れる。
「あぁ。・・・綺麗だ。」
そして、海斗はフフっと笑みを浮かべながら、もう一度目を閉じた。
おわり
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