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「ようやく、ここに来れたぁ!」
蓮は空を見上げて、両手を広げる。
“未来は我が手に!そして、全世界は彼の前に跪く!”
若干の中二病的思想は、この頃の彼にはあったようだ。
「さてと、我が王子様に会いに行こう♪」
彼の名前が解らないので、今は彼の事を王子様と呼ぶ。
王子様とは残念ながら一緒のクラスにはなれなかった。
でも、一緒の学校であることは、間違いない。
先程、桜の木の下で彼を見かけたから・・・
王子様は脆く、儚げな桜の精霊の様に思えた。
“どこのどなたか、せめて一目だけでも会わせて!!
で、良ければついでにお名前だけでも!桜の王子様!”
そんな願いが叶ったのか、放課後、蓮は難なく王子様を見つけた。
“時は来た!いざ、参る!!!”
声が上ずらないように、変に思われないように、自然に、軽く。
「やぁ、君、バスケ好き?一緒にやらない?」
だが、王子はつれなかった。
「今、そんなに時間ないんで。他の人誘いなよ。」
そう言って、去っていく。
あっさり退けられて、蓮は挫けそうになる。
だが、蓮は王子様に会う為、この学校へ来たのだ。
“頑張れ!僕!王子様は僕に試練を与えているんだ!
こんなところで、挫けるわけにはいかない!!”
必死に自分を鼓舞した。
来る日も来る日も誘ってみた。
そしてある日、彼からようやく本音が聞けた。
「バスケ、したこと無いんだ。」
そうだったのか。
僕がウザイとかじゃなかったんだね。
(ウザかったかも知れないが、ここでは考えないことにした。)
じゃあ、やることは一つだ。
蓮は、ニッと笑うと、困った顔をした王子様に言った。
「教えてあげるよ」
二人でするバスケは思った以上に楽しかった。
王子様は運動神経が良かったので、すぐに器用にボールを扱い始めた。
「楽しいね。」
王子様は、声を弾ませて言う。
“解ってくれましたか、王子様!僕も楽しいよ!”
それじゃあ、これで総仕上げだ!
「じゃあ、一緒にバスケ部に入ろうよ。」
身を乗り出して蓮は言う。
どうかYESと言って!
王子様は笑いだした。
「あっははは。なんだか唐突だね。君、名前はなんて言うの?」
「!」
蓮は名前を聞かれて目を見開いた。まさか王子様から聞いてくるとは思わなかったのだ。
「七条蓮って言うんだ。よろしくね!」
「僕は、雪宮海斗。こちらこそよろしく。」
“雪宮海斗・・・”
蓮は、顔を蒸気させ、何度も名前を繰り返した。
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