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3学期が始まり、しばらく経ったある日のこと。
ここは、2年2組の教室。今は中休みだ。
「はぁ~。次は体育か・・・。」
真田は、窓の外を見て気が重くなった。
外は時折小雪がちらついている。
この時期は、持久走で延々とグランドを走らされる。
この中途半端な雪ならば、今日も走る運命だろう。
“いっそ、猛吹雪か、雨ならいいのに。”
そんな事を思っていると、カバンの中の携帯が、ブルブルといいだした。
真田は、慌てて携帯を取り出す。
もちろん、相手は誰か分っている。
最初こそ、鬱陶しいと思っていたこの呼び出しも、最近ではちょっと楽しみになってきた。
『もしもしぃ』
わざと、ふてぶてしく出る。
『先輩!ちょっと、何してるんですか!?』
電話の主は、相楽泉。
女子バドミントン部の1年生だ。
『何って、中休みだから、教室でまったりだよ。』
『ちっ』
電話の向こうで舌打ちが聞こえた・・・ような気がした。
『で、今日はなに?』
どうぜ、ピクシー関連のことだろうと解っていたが敢えて聞いてみる。
『今、渡り廊下から、体育館の方を見てるんですが、森野先輩が、男と話をしてるみたいなんですよ!』
『海斗じゃないのぉ?』
ピクシーと海斗は付き合ってるんだから自然だろうと思うのだが、内心は穏やかではない。
(※本当は海斗とピクシーは付き合っておりません。二人の勘違いです。)
『それが違うんですぅ!』
『渡り廊下から、体育館の方見ても、人なんて判別出来ないっしょ?』
どんだけ目がいいんだよと心の中で独り言ちる。
『出来ますよ。』
泉が、当然とばかりに言う。
『だって、私、今、双眼鏡で二人を見てますから。』
双眼鏡?なんで、そんな物があるんだ!
女子高生の持ち物じゃないだろう?!
半ば真田が呆れていると、泉が、あっ!と声を上げた。
『なんだよ?』
『森野先輩と話をしているシケタ野郎が解りました。2年1組の北山さんですね。』
『おまえっ、それは、うちの部長だろうが!』
なんだよ、“シケタ野郎”って。
あいつは漢の中の漢だろっ!
マジ、切れるぞ。
『あぁ、バスケ部の部長なの?道理で・・・』
『何が言いてぇんだよ?言っとくけど、俺もバスケ部だからな。』
ほんと、勘弁してほしい。
『あぁ、先輩は特別ですよ~、だって私の、相・・・』
“相棒”と言おうとして、泉は途中で口ごもる。
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