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そう。それは僕がこの街に産まれて間もないことだと思う。
僕は、珍しく赤ちゃんのときの記憶がいくつかある。
そのひとつが猫に関わるものなんだ。
僕の隣の家の中学生のお兄さんが猫を飼っていた。
僕とよく遊んでくれたお兄さんで、度々、猫を連れて僕の家に遊びに来ていた。
僕はフカフカで温かい猫をよく追いかけまわしていた。
その猫も真っ黒な猫だった。
頭をぽんぽん叩いても尻尾を掴んでも怒らない猫だった。
僕が赤ちゃんだからか、まるで大人の余裕を見せるような猫だった。
お兄さんもそんな僕に怒ることもなく、そうっと見守っていた。
でも、そんな毎日が突然終わる日がやってきた。
それが僕の喘息なんだ。
その日のことも覚えている。
夜に咳が出て、母親に体温を計ってくれて、父親が慌てて車を出して大きな病院にいった。
病院では数時間の点滴を受けて、僕は眠ってしまった。
次の日に家に帰ったとき母親が僕に喘息なんだよって教えてくれた。
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