13人が本棚に入れています
本棚に追加
第二話~おばあちゃん、さよなら~
クロが家の子になって一年か二年生たった頃、僕は小学生になった。なんで、そんなに時期が曖昧なのかと君は思うだろう。
僕でさえ幼すぎるときのことなので、はっきりとしないんだ。
赤ちゃんのときのことを覚えているのにと君は思うだろう。
しかし、大人になってからの毎日はもっと覚えていない。
記憶とは、そんなものではなかろうか。
さて、クロの話に戻ろう。
その一年か二年の間、クロが里子に出されることはなかった。
おばあちゃんは度々喘息を起こす僕を心配して、クロを預かろうかと何度も電話をしてきたけれども、父親がその度に断ってくれた。
なぜ、そんなにクロを預かろうとするのか父親に聞いたことがある。
その話によると僕が生まれる前に亡くなっていたおじいちゃんが喘息持ちで大の猫好きだったらしい。
死因も喘息だったという。
それを聞いた僕は、おばあちゃんがクロを奪おうとしている訳じゃないと気付いた。
最初のコメントを投稿しよう!