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シロは鏡に飛び込むと案の定、手術室の前で突っ立っている少年のお父さんの目の前に降り立った。
「気分はどうや?」
少年のお父さんは突然にかけられた言葉にびくんと肩を振るわした。
「猫?」
「うちはこの街の守り神をさせてもらっているシロというんよ。最近は神猫と呼ばれているらしいけどね」
少年のお父さんは不安そうな顔から少しの喜びの顔が見えた。
「神猫!妻を、妻を助けに来てくれたのか!」
僕は鏡を覗きながらため息を吐く。
なんと、おめでたい人なのだろう……。
シロはふるふると首を振る。
「ちゃうよ。今回、本当は刺されるのあんただったんよ。それが君の息子と嫁さんが身代わりになるから、あんたを少し欲しいと頼まれたんよ。……だから、あんたの嫁さんはあんたに成り代わって亡くなるんよ。助かることはない。……それとね、あんたの息子さんは天国での暮らしを捨てて、あんたん家の木に生まれ変わる。下手に芽吹いた木を切らんことだね」
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