第二話~おばあちゃん、さよなら~

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痩せ細ったしわくちゃの手で畑仕事をするのも、一人で住むには広すぎる家を毎日、掃除するのも僕らと暮らせば、ずっと楽になるのに。 父親と母親の言うことは最もだと感じる。 だから、一年生の夏休みのときに父親にねだって、おばあちゃんの家に連れて行ってもらった。 そして、直接聞いたんだ。 「おばあちゃんは、どうして僕らと暮らすのが嫌なの?」 おばあちゃんは、相も変わらずにこやかに答えた。 「嫌ではないよ。でもね、おじいちゃんの建てた家を死ぬまで守りたいんだよ。この家にはおばあちゃんの思い出が一杯埋まってるんだよ。簡単には出ていけないよ。それにあんたたちが、ひごまに遊びに来てくれる。それ以上の贅沢は望んでいないよ」 僕は黙ってしまった。 おばあちゃんにとって僕らと暮らすのは贅沢だという言葉に。 そして僕も気付いた。 僕がおばあちゃんの家に遊びに来るのも贅沢のひとつだと。
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