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「僕、一杯ここに遊びに来るね。おばあちゃんが寂しくないように。クロを連れてさ」
「ありがたいねぇ」
皺だらけのおばあちゃんの顔は嬉しそうにくしゃくしゃとなっていた。
でも、僕がおばあちゃんの家でおばあちゃんに会えたのはそれが最後だった。
僕が父親とクロと一緒に家に帰った日の夜、おばあちゃんの家の近くの病院から電話があった。
危篤。
生まれて初めて聞くその言葉に父親と母親は、僕を連れて病院へと車を走らせた。
僕は危篤の意味が分からず、おばあちゃんどうしたのと何度も二人に聞いた。
二人とも、僕に覚悟しておいてと口に揃えて言う。
何を覚悟するのか分からなかったが僕はとりあえず、うんと言った。
病院について、おばあちゃんの病室に僕らは向かった。
おばあちゃんは、点滴や電極を無数につけられ深く眠っていた。
ピッピッピッという機械音だけが部屋に響く。
僕は母親におばあちゃんどうしたのの再度尋ねた。
母親は僕の手をとっておばあちゃんの手を握らせた。
「おばあちゃんをちゃんと覚えておくんだよ」
はっきりと母親はそう言った。
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