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その後、その猫の話をすることもなく、締めに互いに梅茶漬けを食って、割り勘で会計を済ませて、その居酒屋を出ると月が綺麗に空に出ていた。
「満月か……」
僕はそう呟くと知人が僕の肩を叩いた。
「神猫に悪さをばれないようにしなよ」
「なんだよ。神猫って」
「神猫の猫だから、神猫だろ。君は絵描きになったばかりなんだから、精々用心しなよ」
僕はぷっと吹き出した。
「悪さでは君に敵わないよ。君さえ用心しなよ」
知人は、豪快に笑って違いないとまた僕の肩をばんばんと叩いた。
「お互いに用心しよう。僕らはまだまだ未来のある身だからな。じゃあ今日はお疲れ様。来月もここで会おう」
知人は、そう言って僕を置いて歩き出した。
自宅がお互いに反対方向なので、いつも店先で解散となる。
酒を飲んでもよい歳になってから毎月、この店で顔を合わせる。
学生の頃より、付き合いの幅はぐんと狭くなった。
大人とは、こんなものなのだろうか。
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