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そんな疑問を胸に千鳥足で自宅へと足を向けた。
酒を飲み始めてから結構な時間が経つというのに一向に強くならない。
嫌いではないだけに、たまには浴びるほど飲んでみたいものだ。財布との相談にもよるが。
月を眺めながら、歩き続けると突然何かに体を押された。
僕は体を道の端に倒してしまった。
直後に目の前の電柱に車がぶつかった。
僕の酔いは一気に覚める。
「あ、危なかった……」
誰かが僕の体を押さなければ、確実に僕は轢き殺されていた。
感謝の言葉をかけようと辺りを見回したが人の姿はなかった。
ただ、偶然だろうか小さな猫の影だけが僕に見えたのだ。
僕はつい口に出す。
「クロ……。クロなのか……」
そう。それは僕が幼少の頃に飼っていた黒い猫の名前なのだ。
あまりに格好が似ていたから口に出したがクロは僕が小学生の頃に既に死んでいる。
僕は尻餅をついたまま、消防車やパトカーが集まるのをぼうっと見ていた。
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