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クロに会ったのは、僕がまだ小学校に上がる前の話だ。
よく覚えてはいないが、クリスマスか誕生日のプレゼントに僕は猫が欲しいと両親にねだったのだ。
小さな頃から喘息に悩まされていた僕を気にしてか、両親はあまり乗り気ではなかったようだが、どうしても欲しいという僕に両親は根負けした。
だが、両親は僕とひとつの約束を取り付けた。
飼う猫は保健所にいる猫にするということだ。
当時は、その意味がよく分からず、それでいいと答えていたが、両親は命を大切にしろと暗に教えていたのだと思う。
僕は両親に連れられて生まれて初めて保健所という場所に赴いた。
そこには無数の犬と猫がいて僕らに向かって寂しげに泣いていた。
なぜ、そんなに寂しげに泣くのか子供ながらに疑問だった。
保健所の動物たちが殺処分されるのを待つだけとう話を知ったのは小学生になってからの話だ。
僕は、そこでクロに会った。小さな黒い猫で目には目やにがたまり、鼻は渇いて苦しそうにぐったりと倒れていた。
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