第一話~この街に生まれて~

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クロを譲ってもらって最初にしたことは動物病院に連れていったことだ。 そこの医者も保健所から今にも死にそうな猫を連れてきたことに驚いていた。 「そんなに長くは生きられないかもしれない」 ぐったりとしたクロに注射を射ちながら医者はそんなこと言った。 僕は、むっとしてそんなことないと医者に食ってかかった。 医者は困った顔をして僕の頭に手を置いた。 「がんばろう」 それは医者が己に言ったのか、それとも僕に言ったのか今でも疑問だ。 僕はクロを心配そうに眺めて首を一度だけ縦に振った。 処置を終えて、父親の車にクロを抱いて、僕は後部座席に乗った。 抱き締めているクロは、ぶるぶると震えていた。 体調が悪いからではなく、突然に変わった環境に戸惑っているのだろうとハンドルを握りながら父は答えた。 そのまま、ホームセンターと行き、母親が一人でキャットフードと猫用のミルクを買ってきてくれた。
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