第一話~この街に生まれて~

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何度目になるか分からない通院で医者も驚いていた。 「こんなに元気になるとは……。一月もたないと思っていたのに」 僕はクロを抱っこしたまま、舌を見せた。 「残念でした。クロは無茶苦茶元気だよ」 医者は苦笑いをする。 「本当に君を求めたのかもな。長年、獣医をやってるが人と動物の絆の仕組みは今でも分からん」 「絆?絆ってなに?」 「お互いに大切にしてるってことだよ」 「へぇ。絆か……。クロと僕の絆か……。へへ」 僕はクロをひょいと抱き上げた。 「僕らの絆は誰にも負けないもんね」 そんな僕のもうひとつの楽しみは絵を描くことだった。 画家となった今では恥ずかしいだけの絵だが、クロが居眠りしているときとかによく、クロの絵を描いていた。 黒い猫を描いているだけに画用紙は、ただの真っ黒になることも多かったが僕は楽しかった。 そんなことを繰り返しながらクロと一緒に大きくなっていく。 僕は本当にそう思っていたんだ。
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