第一話~この街に生まれて~

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ある日、母親が僕に話があると困った顔で言ってきた。 僕は訝しげにどうかしたのと母親に尋ねた。 「喘息が心配だから、おばあちゃんがクロをあずかろうかと言ってきたの」 僕は即座に僕の膝の上のクロを抱き締めて嫌だと言った。 「なんで、おばあちゃんがそんなこと言うのさ!クロの飼い主は僕だ」 「でもね。おばあちゃんは、喘息がひどくならないようにって心配してるんだよ。おばあちゃんの家に行ったら、いつでもクロに会えるんだよ」 「なんで、そんなこと言うのさ!お母さんは僕の味方じゃないの?」 母親は苦い笑顔を浮かべた。 「そうだね。今日は、お母さんからおばあちゃんに言っておいてあげる。でも、喘息が酷くなったらおばあちゃんに預けるからね」 僕はこくんと首を縦に振ったが、内心穏やかではなかった、。喘息持ちのこの体が恨めしかった。 喘息持ってる子供は動物を飼えないの。 僕は猫を飼うことにずっと憧れていたんだ。
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