第1章 消えた滝本

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「こんにちは、お久しぶりです」  あたしはやっと本当の笑顔になって、店の中を進んだ。  ほお、今日のメンバーはラプンツェルと店長か。ニッコリと微笑む岡崎さんに笑顔を返しながら店を見回すと、見慣れない男性店員が二人目に入った。  おお?もしかして、新しいバイトの人たちかな?彼等の会釈につられて会釈を返す。  この春に就職で辞めた子犬系美男子の守君の代わりのメンバーが、店に入ったらしい。それに、二人も?しかも―――――――  気にしながら店を進み、心の中で拍手をする。あ、ラッキー、あたしの席空いてる。  時間帯が良かったようで、ほぼ満員のこの店でのあたしの定位置はまだ空いていた。  嬉しくそのカウンター一番奥の椅子に滑り込む。  久しぶりの岡崎店長が、見るものをとろけさせる笑顔でカウンターの中から言った。 「薫ちゃん、久しぶりだねー。旅行は楽しかった?」  あたしはハイ!と元気に返事をして、ぐぐっと身を乗り出す。 「岡崎さん、彼等は新しいバイト君達ですか?」  店長がにっこりと頷く。  あたしは肩越しにキャッシャーの所で棚の整理をしている彼等を見た。守君に代わる、この店の新しいバイト君たちは、何と、双子だった。 「・・・二人も必要だったんですか?」  声を潜めて聞く。  だって守君とラプンツェル朱里、それに金髪団子ヘアーが特徴の由美ちゃん、それに岡崎店長の4人で、ここ数年回ってきたこのお店だ。二人もいるのかしら、と思って。  岡崎さんは爽やかにあはははと声を出して笑い、だってね、と言った。 「双子ってだけで楽しいかと思って」  ・・・・そりゃあそうかも、ですが。あたしはつい苦笑した。ある意味素敵な理由だ。  もう一度振り返る。  守君と同じくらいの身長かな~・・・ってことは175センチくらい?ほぼ同じ髪型をしているけど、髪の色が違うので判別はつきそうだ。シンプルな作り、でも瞳が大きくて可愛い感じ。
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