第1章 消えた滝本

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 うーん。いいなあ!またここにくる楽しみが増えたぜ!思わずにやけると、お水を持って朱里ちゃんがやってきた。 「おひさしぶりです、薫さん」 「姫~!元気だった?お土産あるんだよ」  パッと振り返って、彼女と笑う。足元に置いた大きな紙袋をそのまま渡した。 「皆の分も入ってるので、後で分けてください。名前、貼ってるから」 「ありがとうございます!わーい」  姫がキラキラと喜ぶ。そして前では岡崎さんが優しく微笑みお礼を言ってくれる。・・・・癒されるわ~・・・・何、この人たち。絶対体からマイナスイオンが何か出してる。 「薫ちゃん、ランチでいいの?」  袋を抱えてバックヤードに入る姫を目で追って優しい空気に浸っていたら、岡崎さんの声でハッとした。そして、いえ、と首を振る。 「コーヒー下さい。ちょっと急いで帰らなきゃなので」  ケータイをチェックしなければならない。さっきの調査会社のメンバーの落ち込んだ顔を思い出して気持ちが下降したのが判った。  岡崎さんがちょっと首を傾げる。 「・・・どうかしたの。何だかいつもの薫ちゃんの楽しそうな感じがないな」  あたしは岡崎さんを直視できずにあはははと笑う。 「出てますか?すみません、暗い顔で」  彼曰く命を懸けているらしいドリップにしばらく集中した後、香り高い本日のブレンドコーヒーをあたしの前においてくれながら岡崎さんが言う。 「・・・いや、いいんだけど」  ずばっと聞かないところがこの人の優しさなんだろうな、と思った。口元は優しく微笑んでいるけど、瞳には心配そうな光。じいーっと見詰める。・・・ううーん、いい男だ!  台湾の後のハワイで金髪碧眼のナイスガイや赤毛のスパイシーガイにはたくさん会ったけど、やっぱりあたしは日本産のイケメンがいいわあ~!  綺麗に整えられた黒髪が首筋にかかるのとか、ぐっとくるぜ~!黒い目も、黒い睫毛が影を作るのも、超素敵。ひゃっほう!  岡崎さんは心配して見てくれていたらしいけど、どうやら前に座る常連の女子が自分を観賞して楽しんでいるらしいと気付いて苦笑した。 「・・・薫ちゃんの目がハートマークになってると思うのは、俺のうぬぼれかな」
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