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そんな様子には全く気がつかないフリで岡崎さんはカウンターに身を乗り出して声を潜めた。
「居なくなったってこと?」
つられてあたしも身を乗り出して声を潜める。
「・・・らしいんです。他のメンバーが途方にくれてました。皆さん、あたしと一緒に旅行に行ってたと思ってたらしくって・・・」
うわあお、至近距離でイケメンが!ううーん、滝本には悪いけど、この世はバラ色モードに突入したあたしだった。
ふーん?と岡崎さんは首をかしげ、ぼそっと呟く。
「結構長い間なの?」
「2週間くらいだそうです」
驚いた顔をした。ちょっと身を引いて、口元を片手で覆っている。
「・・・2週間?それって結構まともな行方不明だね」
そりゃ引くよね。普通の反応ってやっぱりそうだよね。2週間は長いよな!
あたしは重々しく頷く。
「そうですよね。職業柄、何かの事件に巻き込まれたって可能性も高いですし。とにかくあたしが現れるのを待っていたようなんですけどね、会社の皆さんは」
「・・・友達の家とかは?」
あたしは瞬きをして椅子に座りなおす。怪訝な顔になっていたはずだ。
「友達ですか?・・・だってあの男に友達なんか―――――――」
いるわけない、と答えそうになって、あ!と思った。
一人、いるじゃん。友達ではないかもしれないが、多分、滝本がこの世で一番信頼しているだろう相手が。やたらと仲は悪いけど一緒にあの調査会社を興したと聞く、桑谷さん。
去年2回だけ、本人と会ったことがある。今は一般のサラリーマンだと聞いているが、普通じゃない空気を身にまとっている人だった。
あの背が高くて岩のような体をした、やたらと迫力のある声の低い人―――――
確かに、何かあったなら桑谷さんには連絡するかもしれない。
あたしはパッと顔を上げて笑顔を浮かべた。
「本当だ、そこを忘れてた!岡崎さん、ありがとうございます。あの人にも聞いてみようっと」
もしかしたら飯田さん辺りが聞いてるかもだけど、今朝桑谷さんの名前はでなかったんだから、まだだと思う。
そうと決まれば、取り敢えず予定通りに買い物に行ってから家に戻って・・・。
あたしはぐいっとコーヒーを飲み干して立ち上がる。
「ご馳走様でした。またモーニング頂にきますね!」
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