第1章 消えた滝本

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 そんな様子には全く気がつかないフリで岡崎さんはカウンターに身を乗り出して声を潜めた。 「居なくなったってこと?」  つられてあたしも身を乗り出して声を潜める。 「・・・らしいんです。他のメンバーが途方にくれてました。皆さん、あたしと一緒に旅行に行ってたと思ってたらしくって・・・」  うわあお、至近距離でイケメンが!ううーん、滝本には悪いけど、この世はバラ色モードに突入したあたしだった。  ふーん?と岡崎さんは首をかしげ、ぼそっと呟く。 「結構長い間なの?」 「2週間くらいだそうです」  驚いた顔をした。ちょっと身を引いて、口元を片手で覆っている。 「・・・2週間?それって結構まともな行方不明だね」  そりゃ引くよね。普通の反応ってやっぱりそうだよね。2週間は長いよな!  あたしは重々しく頷く。 「そうですよね。職業柄、何かの事件に巻き込まれたって可能性も高いですし。とにかくあたしが現れるのを待っていたようなんですけどね、会社の皆さんは」 「・・・友達の家とかは?」  あたしは瞬きをして椅子に座りなおす。怪訝な顔になっていたはずだ。 「友達ですか?・・・だってあの男に友達なんか―――――――」  いるわけない、と答えそうになって、あ!と思った。  一人、いるじゃん。友達ではないかもしれないが、多分、滝本がこの世で一番信頼しているだろう相手が。やたらと仲は悪いけど一緒にあの調査会社を興したと聞く、桑谷さん。  去年2回だけ、本人と会ったことがある。今は一般のサラリーマンだと聞いているが、普通じゃない空気を身にまとっている人だった。  あの背が高くて岩のような体をした、やたらと迫力のある声の低い人―――――  確かに、何かあったなら桑谷さんには連絡するかもしれない。  あたしはパッと顔を上げて笑顔を浮かべた。 「本当だ、そこを忘れてた!岡崎さん、ありがとうございます。あの人にも聞いてみようっと」  もしかしたら飯田さん辺りが聞いてるかもだけど、今朝桑谷さんの名前はでなかったんだから、まだだと思う。  そうと決まれば、取り敢えず予定通りに買い物に行ってから家に戻って・・・。  あたしはぐいっとコーヒーを飲み干して立ち上がる。 「ご馳走様でした。またモーニング頂にきますね!」
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