14人が本棚に入れています
本棚に追加
両手にギリギリの袋を持って、足でドアを蹴っ飛ばして開ける。よろよろと台所まで運んで、やっと一息ついた。
既に結構携帯電話が気になっているけど、取り敢えずと食品をしまっていく。携帯を見て、滝本から連絡がなかったら凹む・・・だろうか。あたしはどんな反応をするだろう。
目の前に立つあの男はあたしを動揺させる。照れさせるし、怒らせて悲しませる。だけども本人は今いないのだ。あたしは平常心で受け入れられるだろうか。
立ったままでペットボトルから水を飲む。その間にも目はずっと携帯が入っている棚の引き出しを見詰めていた。
こんなに携帯電話の存在を感じたのは生まれて初めてだ。
ふう、とわざわざ息を吐き出して、やっと棚の引き出しから携帯を取り出した。
画面には確かに着信の嵐。その全てが調査会社の番号だった。
・・・ごめんね、飯田さん。何回もしてくれたんですね。
知らなかったとは言え、心が痛むぜ。
着信は大量にあったけど、やっぱりというか何というか、メールは一件もなかった。
パタンと音を立てて携帯を閉じる。
「・・・・」
あの男からあたしへの連絡はなかった。それを明日調査会社のメンバーに伝えたら、さぞガッカリするだろう。あたしにもなかったかって。
・・・・あたしにも。
何も。
・・・・・・・別に悲しくない。
目を細めて夕方に近づきつつある空を見上げた。
悲しくはない。だけど、だけど――――――――――――
「むっかつく~!!!」
畜生!あたしは叫んで、思わずクッションを蹴っ飛ばした。
何だよあのオッサン!あたしに心を開けとか言っておいて、肝心な時には結局無視かよ~!!
あの男は呆れるほどの情熱の塊をぶつけてあたしを抱くのだ。あの時は優しく潤むあの瞳や焦らす指は、一体何だったのだ!全部嘘か!?
あれほどアチコチ人の体の未知のスイッチをオンにしといてたまに強烈に繊細な顔まで見せ、誰にも言わず、というか、あたしにさえも言わず、消えてしまった。
一人で。
いつも、一人で消えるなとあたしに言う男が。
うっきー!!あまりにムカついて、壁を殴り、その痛さでちょっと冷静になった。
最初のコメントを投稿しよう!