第1章 消えた滝本

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 翌日も早起きだった。  昨日もそうだけど、滝本が消えてしまってから朝一事務所に行っているので早起きだわ・・・うう、このあたしが。  毎日のエクササイズもして、ついでにあたしの栄養源、岡崎さんのカフェに寄ってから行こうと考えると、どうしても6時起きになってしまう。  一体どういうこったい!あたしは定職にすら就いてないのによ!  まだ若干時差の影響が残っていて辛かった。 「・・・そうか、あたしももう三十路近いんだったわ・・・」  タオルケットに額をつけながらついぶつぶつと言った。  エアコンをつけて、そのままエクササイズに入った。柔軟体操を兼ねたヨガ、太極拳、ついで逆立ち。今日はダンスはやめておこう。そんな気分じゃないわ。  そしてシャワーを浴びて、ぱぱっと身支度を整える。  鏡の中のあたしは白いチビTにぶかぶかのブルージーンズを腰履きしている。お腹を見せれるのも今年くらいで終わりかな・・・などと考えた。まだいける、と思うけど。いや、思いたいけど。  今年の春先に短くして(いや、なって、か)赤毛にしたあたしの髪は、今では肩のあたりまでのセミロングになっている。赤毛の先の方はハワイの太陽と海の塩でやけて金髪に光り、頂点は黒毛が出てきていてやたらと騒がしい頭になっている。  鏡にうつる姿を見て苦笑する。・・・派手なねぇちゃんだ。  滝本の捜索がどうなるか判らないが、このままでは目立つに決まっている。  ううーん・・・と暫く悩んで、よし、と決心し、マネークリップでとめたお札をジーンズのポケットに突っ込んで家を出発した。  いつもの道を大好きなカフェまで歩く。  そしてお店には入らずに、その向かいにある美容室のドアを開けた。  ここの美容室は年中無休の朝7時半から夜10時までっていう、モンスター美容室なのだ。従業員の数を多くして、コンビニ感覚での客を狙っているらしいと岡崎さんのカフェで働く由美ちゃんに聞いたことがある。  それを思い出したので、寄ってみる気になったのだ。  今日のあたしには時間がないから丁度いいわ。  オープンとほぼ同時に店に入ったあたしは、すぐの受付でにっこりと微笑む。メニューは、と聞かれ、カットとカラーでと答えた。  いざ、変身。
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