第1章 消えた滝本

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 ウキウキと弾みながら、お礼を言う。 「変じゃないですか?良かった。日焼けでかなり痛んでいたので、ばっさり切りました」 「ここに来てくれるようになって初めてだよね、そんなに短いの。あ、そうだ・・・」  パッと笑顔を消して、岡崎さんが言った。 「滝本さんは見つかったの?薫ちゃんのテンションはやっぱり低めに見えるけど」  ・・・ええ、そうですよね。判ってます、あたしはかなり薄情ですとも。本当にテンション低めに見えました?  あたしはううっと一度唸って、顔を上げた。  そうだ、いつまでも美形に褒められて喜んでいる場合ではない。さっさと食べて、調査会社に行かなくちゃ。桑谷さんが来てしまう。 「まだ、なんです。あたしも一緒に探してるんです。それで、今朝も早くて」  頂きます!と手を合わせて、岡崎さんの視線は出来るだけ無視してガツガツ食べる。  気取って食べてる場合じゃなかったんだ、あたし。  岡崎さんはうーん、と低く呟いた。 「・・・それは心配だね。警察には行ったの?」 「いえ、それも今日皆で相談することになってて」  話途中で、カウンターから由美ちゃんが岡崎さんを呼んだ。ごめんね、と言って岡崎さんは仕事に戻る。  あたしがガツガツとモーニングを平らげていたら、双子の兄の方がお水を足してくれた。 「あ、ありがとうございます」  顔をあげてお礼を言うとはにかんだ笑顔を返して立ち去る。・・・ううーん、本当この店はいい男ばかりだな。守君が懐かしいけど、双子も素敵。  見回すと、店に来ている女性陣もそう思ってるらしかった。  ・・・岡崎さん、アルバイトの選定、もしかして顔で選んでるんじゃないでしょうね。  バカなことを考えながら大好きなモーニングを完食した。  水を飲み干して立ち上がる。  桑谷さんが来る前に事務所に行っておきたかった。 「ご馳走様です」  カウンターの中で働く岡崎さんと由美ちゃんに会釈をして、レジで今度は弟君と対面する。 「いつもありがとうございます」  その笑顔をみて、おや、とあたしは思った。兄はシャイな感じの笑顔だったけど、弟は突き抜けたような笑顔だな。・・・うん、やっぱり個性というのは双子でもあるんだな。 「ご馳走様でした。えーと・・・海野、さん、って学生さんですか?」
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