第1章 消えた滝本

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 ああ、確かにかなり明るかったですもんね~と誉田君の声がする。  何だかいつもと空気が違う。滝本がいる時とも、3人だけの時とも。  あたしは改めて強い存在感を放つ桑谷さんを眺めた。  この人は、とてもここにしっくりくる。 「今カメラの映像見てもらってたのよ、でもやっぱり知らないって」  湯浅女史があたしに説明してくれる。その画像のコピーを持って、桑谷さんが肩をすくめた。 「画像が荒すぎて女であることくらいしかわかんねーな。英男の家は調べたのか?」  飯田さんがまだですと返事をする。  ため息をついて、桑谷さんが言った。 「・・・なら、とりあえずあいつの家行くか。それで、知り合いの警察に問い合わせしてみよう。俺は今日しか付き合えないから、さっさと動こうぜ」  湯浅さんは電話番といつもの事務頼むね、と桑谷さんが指示を出し、飯田さんと誉田君は何やら用事をしていた。  あたしは桑谷さんに近寄る。 「あのー、すみません、忙しい時期でしたか、今?」  だとしたら申し訳ないなと思って言うと、いやいや、と手を振った。 「妻が今日から里帰りでね、沖縄に行くんだ。それで、俺は子供の世話役なんだよ。昼間は保育園だから大丈夫なんだけど、明日明後日が土日で保育園休みだからさ」  ――――――保育園。子供の世話。  うわあ~・・・すんげー所帯じみた単語を聞いてしまった!!この人に、あまりに似合わなくてビックリしてしまったぜ~!  でもそうか、そりゃあそうだよね・・・子供さんいるって滝本も言ってたもんな。・・・うわあ~・・・。  あたしがぶつぶつ言っていると、彼は苦笑した。 「・・・判ってる、皆驚くんだ。俺、面倒見いいんだけどなー」  支度が出来たと飯田さんがいい、事務所から歩いて15分ほどの滝本の部屋へ行く事になった。  桑谷さん、あたし、飯田さんと誉田君がぞろぞろと歩く。  道々聞くと、桑谷さんが百貨店で働いていると判ってまた驚いた。この無骨な(失礼。ダメよねあたしったら、恩人に対して)男が、百貨店だとーっ!??って。  奥さんとはそこで知り合ったらしい。へえ~と興味深く聞いていたら、徒歩15分なんてすぐだった。  マンションの下で、桑谷さんが振り返る。 「・・・あいつが居ないって前提で聞くけど、誰か鍵開けられるか?」
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