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「普通の人間は危ないあんなところに手を突っ込んだりしない。だから、メモ程度のものを隠すには好都合だろ」
ほえ~・・・それって一体いつからの癖よ、滝本!心の中で叫んだあたしだった。
一応恋人であるあたしだけど、この家で食事をするのにも自分で何か作ったりしない。だから包丁が仕舞われている場所すら知らなかった。例え包丁がある場所を知っていたとしても、まさかその刃の間を縫ってメモが貼り付けてあるだなんて想像もしないだろう。
あんたの今までの人生は一体どんなだったんだ!?何だかえらく暗そうだぞ、そんな癖が出来るなんて。
「・・・桑谷さんは知ってるんですね」
飯田さんが呟き、それに桑谷さんが片眉を上げつつ苦笑した。
「―――――――そう、俺は知っている。それをヤツも知っている」
彼が説明するのをあたし達は黙って聞いていた。
「つまり、何らかの事情で自分が戻らなくなって困った君達は最終的には俺に連絡をするはずだ、と英男は考えたんだろう。そしてここに来たら、俺ならこれを見つけると」
・・・おお。そしてその通りになったってことか。
桑谷さんは言いながら指で挟み持ったメモをヒラヒラと振る。
「自分が無事なら後で破棄すればいい。だけど万が一そこまで困った状況になった時の為にと考えて、これを残したんなら・・・」
桑谷さんは飯田さんが持ってきた鞄から例のぶれた写真を取り出した。それにうつる女性を指差す。
「・・・この女の名前が、富永アヤメ、なんだろうな」
後の3人はただ黙って彼を見詰めていた。誉田君は、目をまん丸にして写真と桑谷さんを交互にみている。
あたしは心の中で呟いた。
何だこの人。・・・おっそろしー。
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