第2章 ムカつく女

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 滝本のマンションを出て、歩いている時に、飯田さんがポン、と手を打った。 「あ、そうだ。一応、所長が最後に会った彼にも確認だけはしましょうか」 「彼?」  誉田君が振り返って聞く。桑谷さんが頷いた。 「・・・ああ、ストーカーの案件の高校生か?」  飯田さんがそうです、と返す。 「多分関係ありませんが、一応。彼を外せると可能性はあの女性だけにしぼられますから」  そんなわけで、飯田さんとあたしはとても高校生には見えないストーカー事件の被害者に会いにいくことになった。  その間に誉田君と桑谷さんは事務所に戻り、昼ごはんの調達と発見した「富永アヤメ」に関して調べるらしい。  事務所前で手を振って別れ、あたしは飯田さんと車に乗り込む。 「高校生でしたよね。学校へ行くんですか?」  あたしが聞くと、飯田さんは頷いた。 「丁度昼休みで捕まえられると思うんです」  はあ、成る程。学校なんて卒業して久しい上にずっと自由業なあたしだから、既に感覚なんて忘れてしまっている。  休み時間か!確かにあったな、そんなもの。  つらつらと懐かしき学生生活のことを考えていると、やたらと金のかかってそうな私立の高校が見えてきた。 「・・・・げ。金持ち学校?」  あたしの呟きに隣で飯田さんが苦笑する。 「教育方針は結構厳しいので有名ですけどね。依頼者の鮎川君の叔父が校長をしてるらしいですよ」  ・・・へえ~、身内の学校か。それってやりやすいのかやりにくいのか、どっちなんだろ・・・。  少し離れたパーキングに停めて、学校まで歩いていく。  門のところで守衛さんに電話をしてもらい、暑い中で暫く待つと、本人が歩いてくるのが見えた。  思わず凝視した。  ―――――――わお。やっぱり超格好いい・・・。  長い手足を持て余したようにポケットに突っ込んで、全身に金色のオーラか何かをまとっているように目立っていた。  こんなに暑い中で涼しそうな顔をしているのは一体どうしてなのだ。  退屈そうな顔が、あたし達を見つけた途端にいたずらっ子のような表情に変わる。美しい瞳があたしを捉えてしゅるりと細められた。
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